大阪・関西万博の理念とテーマ事業の考え方
私たちのいのちは、この世界の宇宙・海洋・大地という器に支えられ、互いに繋がりあって成り立っている。その中で人類は、環境に応じて多様な文化を築き上げることにより、地球上のいたるところに生活の場を拡大した。その一方で、人類は、利己を優先するあまり、時として、自然環境をかく乱し、さらには同じ人類の他の集団の犠牲の上に、不均衡な社会を作り上げてきてしまったのも事実である。そして今、生命科学やデジタル技術の急速な発達にともない、いのちへの向き合い方や社会のかたちそのものが大きく変わりつつある。
いのちそのものを改編するまでの高度な科学を築き上げた私たちには、人類が生態系全体の一部であることを真摯に受けとめるとともに、自らが生み出した科学技術を用いて未来を切り開く責務があることを自覚し、行動することが求められる。自然界に存在するさまざまないのちの共通性と相違性を認識し、他者への共感を育み、また多様な文化や考えを尊重しあうことによって、ともにこの世界を生きていく。そうすることによって、私たち人類は、地球規模でのさまざまな課題に対して新たな価値観を生み出し、持続可能な未来を構築することができるにちがいない。
このような信念に基づいて開催しようとする2025年大阪・関西万博は、2020年以来、新型コロナウイルス感染症の地球規模での拡大という未曾有の局面に立ち会うことになった人類にとって、このような局面だからこそ見えてくる人類の可能性を確認しあい、新たないのちのありようや社会のかたちを検証し提案する、2度とない機会を提供する場となった。
2025年日本国際博覧会協会は、一人ひとりが互いの多様性を認め、「いのち輝く未来社会のデザイン」を実現するため、以下の8つのテーマ事業を設定することとした。
いのちを知る |
いのちを育む |
いのちを守る |
いのちをつむぐ |
生命系全体の中にある私たちのいのちの在り方を確認する。 | 宇宙・海洋・大地に宿るあらゆるいのちのつながりを感じ、共に守り育てる。 | 危機に瀕し、人類は「分断」を経験する。「わたし」の中の「あなた」を認めるいとなみの行方に、多様ないのちが、それぞれに、護られてゆく未来を描く。 | 自然と文化、人と人とを紡ぐ「食べる」という行為の価値を考え、日本の食文化の根幹にある「いただきます」という精神を発信する。 |
いのちを拡げる |
いのちを高める |
いのちを磨く |
いのちを響き合わせる |
新たな科学技術で人や生物の機能や能力を拡張し、いのちを広げる可能性を探求する。 | 遊びや学び、スポーツや芸術を通して、生きる喜びや楽しさを感じ、ともにいのちを高めていく共創の場を創出する。 | 自然と人工物、フィジカルとバーチャルの融和により、自然と調和する芸術の形を追求し、新たな未来の輝きを求める。 | 個性あるいのちといのちを響き合わせ、「共鳴するいのち」を共に体験する中で、一人ひとりが輝くことのできる世界の模式図を描く。 |
これらのテーマ事業から得られる体験は、人びとにいのちを考えるきっかけを与え、創造的な行動を促すものとなるに違いない。他者のため、地球のために、一人ひとりが少しの努力をすることをはじめる。その重なり合い、響きあいが、人を笑顔にし、ともに「いのち輝く未来社会をデザインすること」につながっていく。
世界の人びとと、「いのちの賛歌」を歌い上げ、大阪・関西万博を「いのち輝く未来をデザインする」場としたい。
これは、いのちを起点に、世界の人びとと未来を共創する挑戦にほかならない。